カファブンガ

小雨の振りし来るなか傘を持たずに六本木界隈を歩いていて、偶然見つけたカファブンガというカフェに雨宿りがてら入った。ご主人は1960年以前のポピュラーミュージックファンで、当時の流行曲を歌手のゴシップを交えながら有名曲を掛けてくれた。1960年以前はミュージカル映画が絶頂だった背景があるので、歌手の多くはフランク・シナトラに代表されるように映画俳優でもあったようだ。ご主人のお気に入りはイタリア系の歌手の曲で、どうやらブルックリンなどイタリア移民の歌手はカンツォーネや、オペラなどの下地を活かした大胆で派手な迫力のある歌い方が特徴で、大きな声量でまさに歌い上げるといった感じだ。
エルビス・プレスリービートルズ登場以前のポピュラーミュージックはリズムよりメロディが主体で、ブルースやジャズなど黒人音楽の影響が全く感じられず、今聞いてみると却って新鮮な感じがする。心が大きくなるというか、リズムに合わせるというのは、やはり規律正しさというか全体主義的な傾向がやはりあるのか、比較してしまうとこじんまりした感じが拭えない。しかし、自分はジャズのスイングのリズムは好きだし、ジャズの場合はそのリズムの単調さを突き破るために、変則的な音階やフレーズを生み出していった。その歴史はそれはそれで惹きつけるものがあり、どちらが素晴らしいと比較できない。いずれにしても音楽はその時代の人の要望や苦しみが形になったものだと思うと、音楽はこれからも変わり続けていくのだと思うし、そうであって欲しい。