2007-01-01から1年間の記事一覧

カファブンガ

小雨の振りし来るなか傘を持たずに六本木界隈を歩いていて、偶然見つけたカファブンガというカフェに雨宿りがてら入った。ご主人は1960年以前のポピュラーミュージックファンで、当時の流行曲を歌手のゴシップを交えながら有名曲を掛けてくれた。196…

やはりエジプトか

つい最近、オシリス神話関連の本を読んでいて思ったことですが、ギリシア神話よりエジプト神話の方がより自分を惹きつける魅力があるのかなと感じました。ギリシア神話の場合はゼウスというあらゆる権力を手中にした最高神が自身の欲望を満たすために(男と…

ビッグ フィッシュ

久しぶりの書き込み。 ティム・バートン監督の映画「ビッグ・フィッシュ」をレンタルDVDで見る。 個人的にチョコレート工場を見て演出手腕の衰えを感じていました。期待半分恐る恐る見てみたのですが、内容は実に面白く濃い。シザー・ハンズから続くファ…

痩せた背中 鷺沢 萠

痩せた背中 鷺沢 萠主人公はオイサンと呼んでいた父親の葬式に出席するため、久方振りに故郷の高崎に帰る。家に戻ると、オイサンの女がいた。オイサンは主人公の母親と死別した後何人もの女を垂らしこんでいたが、主人公と三人で暮らした女は一人だけだった…

第75回 文学界新人賞 ちょっとムカつくけれど、居心地のいい場所 伏本和代主人公の女子高生には年の離れた叔母がいる。叔母はある日、一緒に探偵事務所について来てくれないかと頼む。 叔母の夫がどうやら浮気をしているらしく、その調査依頼に付き合って…

第79回 文学界新人賞 マイナス因子 木村巴若い女の子二人が、日常への苛立ちやら未来への不安を募らせながら、その果てに心中するというお話。サガンの悲しみよこんにちは以来続く女の子小説の典型的なスタイルで書かれている。若い女の子の日記、今で言う…

ジェロニモの十字架

第80回文学界新人賞 青来有一 ジェロニモの十字架後から知ったのだが芥川賞受賞作品でもあるようだ。この作品ほど受賞に相応しいものはないし、もしかすると賞の器を越えた作品とも言える。長崎という舞台が重要な意味をなしているところなど、ニューハン…

デッドエンドスカイ

第81回文学界新人賞 塩崎豪士 目印はコンビニエンス作風は安部公房の「人間そっくり」に近く、ナンセンス小説といっていいだろうか。主人公はある日テレクラでとった電話の相手が指示した住所に向う途中、ひどい迷子に陥り地下鉄の出口を行ったりきたりす…

脳病院へまゐります。  若合春侑

第86回文学界新人賞 若合春侑 脳病院へまゐります。精神を冒された主人公の手紙にしたためられた独白を、旧字旧仮名遣いで書いた耽美的な作品。作者の女性は谷崎潤一郎を敬愛し、春琴抄のスタイルを模倣したという。しかし、内容は痴人の愛、卍、刺青など…

第88回文学界新人賞 羽根田康美 LA心中タイトルで分かるとおりLAが舞台。主人公はルックスの良い日本人とのハーフ。ハリウッド女優のような美貌な彼女がいて、法律事務所のようなところで働いている。そんな彼が、ある日本人の中年になりかけの女性と…

最後の息子  吉田修一

第84回文学界新人賞 吉田修一 最後の息子新宿を舞台にゲイのカップルの生活が描かれた作品。所謂ゲイの店が軒を連ねる新宿の界隈で店を開き、人気を集める閻魔というゲイのヒモとなって生活を送る主人公だが、以前は女性の彼女がいた。しかし、今では閻魔…

看板屋の恋

第91回文学界新人賞 都築隆広 看板屋の恋三鷹駅までいつも葬儀屋の案内看板を持って立つハーフの若者ジェイと大学受験を失敗し小説家を目指す主人公はある日立場を入れ替えて生活をするようになる。主人公の提案だった。そして主人公の男は下宿先の大家の…

蒔岡雪子

第94回文学界新人賞 蒔岡雪子 飴玉が三つ母娘がアルコール依存症者を支援する断酒会に参加する。いわゆる1930年代にアメリカで始まったアルコホーリクス・アノニマスのようなサークルなのだが、この断酒会ではアルコール依存症に悩む本人だけでなく、…

吉田直美

第三十八回新潮新人賞受賞作. ポータブル・パレード. 吉田直美ドンキホーテの二番煎じを彷彿させる激安ショップで店長をしている主人公には姉がおり、そして姉には双子の小さい息子と、怪しい商売をする夫がいる。怪しい商売とは、去勢された猫を引き取り去…

イッツ・オンリー・トーク

第96回文学界新人賞 絲山秋子 イッツ・オンリー・トーク精神的に病んでしまった主人公の女性は新聞社をやめて画家になり、東京大田区の蒲田という下町風情の街に住む。精神病で画家といっても、引きこもりではなくある意味社交的で人付き合いを楽しむ性格…

ハンゴンタン

第97回文学界新人賞 由真直人 ハンゴンタン主人公は福井の置き薬会社の新人営業マン。各家庭に備え付けておいた置き薬箱を定期的に調査してまわり、使用した薬分の代金を徴収して回るというのが仕事だ。毎月のノルマを果たすために四苦八苦の主人公だが、…

介護入門

第98回文学界新人賞 モブ・ノリオ 介護入門三十手前の主人公の男はニューヨークを旅行中、親から呼び出しの電話をくらう夢を見て電話をすると、実家で祖母が玄関で転倒して危篤状態だという知らせを聞き慌てて帰国するのだった。主人公の祖母は頭蓋骨陥没…

パークライフ

第127回芥川賞受賞作 パークライフ 吉田修一日比谷公園で昼休みを過ごすことを日課としている主人公の三十前後のビジネスマンの日常生活を描いた作品。社会的にもある程度の地位を確保するようになり金銭的にはもちろん何不自由のないあらゆる意味で恵ま…

初子さん

第99回文学界新人賞 2004年赤染晶子 初子さん 昭和50年代の京都が舞台。アンパンとクリームパンしか売らないパン屋に下宿する初子さんは洋裁の職人。貧しい家庭に育った初子さんは小さい頃から洋裁の技術を身につけて一人立ちし質素堅実な生活を送ってい…

さりぎわの歩き方 

第101回文学界新人賞作品 中山智幸の「さりぎわの歩き方」二十代の最後、結婚を目前にする主人公の男は、ニュースサイトの担当記者。度重なる幼年者に対する痴漢行為で捕まる友人、会社をクビになった後セキュリティ時代を勝ち抜くと諮問認証装置の開発に…

山月記

夭折の小説家、中島敦の山月記。 古代の中国を舞台に、博学で将来を有望視しされた李徴は自らのプライドの高さにより官吏を辞職し、詩才に耽るようになる。同期の者たちが出世していくなか、汝水家族を養うために低級官吏の身に甘んじることになる。そんなあ…

谷崎潤一郎

昨年からお世話になっている水天宮前にある会社へ納品に行った後、日本橋図書館へ向う途中、偶然に人形町の甘酒横丁沿いにある谷崎潤一郎生誕記念碑を発見。半年近く会社へ納品へ行ったついでに立ち寄ろうとずっと思っていたのだが、場所を把握しておらずど…

第103回(2006年) 田山朔美 「裏庭の穴」、藤野可織 「いやしい鳥」

第103回(2006年)文學界新人賞受賞作二作品を読んだ。 いずれも女性作家の作品。 田山朔美 「裏庭の穴」はまだ若さやを感じさせる母親が主人公。 ある日、そんな彼女がミニ豚を飼うことになる。 人付き合いがとりわけ苦手なこともあり、豚の世話に没頭する…

東京下町

日暮里駅を降りて紅葉坂をのぼってしばらく歩いていると谷中霊園に出る。谷中霊園の裸になった桜並木を抜け、さらに観音寺の築地塀を通り過ぎると、乱歩という喫茶店がある。江戸川乱歩と乱歩の「D坂の殺人事件」にちなんだ店。谷中の街紹介でよく登場する…

明けまして − それからガンダム

明けましておめでとうございます。 文芸誌ムセイオンともども宜しくお願いします。 http://eizou.web.infoseek.co.jp/muse1.html 正月3日間を実家で過ごした後、仕事をするために都内に戻ってくる。家に戻ってきて、まずハードディスクレコーダーに予約録画…