「麦の穂をゆらす風」

 吉祥寺のアーケード街サンロードにある単館上映の映画館バウスシアターでケン・ローチ監督の「麦の穂をゆらす風」を観る。

 1920年前後のアイルランド独立革命を背景に、英国軍の弾圧を受けながら貧しい田舎で暮らす兄弟がIRA(アイルランド共和軍)に属し革命に身を投じていく。決して国粋主義や革命に身を投じる若者を美化しているわけではなく、権力と自由の矛盾から引き起こされる悲劇が描かれている。既存の権力に逆らった者はやがて権力を勝ち取り、新たに抵抗する者との確執が生み続けられる。


結末はギリシア悲劇のようで、人間は生まれついて悲劇性を帯びているといわんばかりに静かに幕を閉じるのだった。


徹底したリアリズムの視線を持った監督が戦争映画を作ると戦争本来の姿ー戦争にはヒーローもヒロインもましてや感動も存在しない、あるのは悲惨さだけだということを教えてくれる。