ドクトルジバゴ・マグノリア

アラビアのロレンス」と同様、ある人物を通してドクトルジバゴという特異な人生を送った男の回想が長々となされる。とはいっても「アラビアのロレンス」のような活劇ではなく、古典的な戦争を舞台にした男女のメロドラマ、それも不倫に華をさかせる男女の話なので話的にはかなりまったりしている。監督の悲劇至上主義があいまって、作品自体かなりへヴィーな部類のものに入るだろう。個人的に唯一気にかかったのは、作品中頻繁に流れるテーマ曲「ラーラのテーマ」。ラーラとはジバゴが恋する不倫相手の金髪美人の名前である。

新しいタイプのアメリカ映画


監督のポール・トーマス・アンダーソンは「ブギーナイツ」という青春映画でアカデミーデビューを果たした人だが、そのころからいわゆるハリウッド映画とは一線を画す作品を世に送っている。といっても作品数は少ないのだが。
彼の作品の特徴は、まず話が長い、物語が淡々と進んでいく、登場人物が全員脇役といったところだろうか。「ブギーナイツ」では最後の全員脇役具合が悪い方向に向かっていたような気がしていたのだが、「マグノリア」では狙いがすべて成功し登場人物全員が主役という印象さえ受けた。脚本や演出の洗練度もさておき、キャスティングが見事で、普段はヒーローものしかやらないトム・クルーズが生来のハングリーさなど、地の部分が垣間見えるような絶妙な演技をみせている。

文芸誌ムセイオン
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